読者本部の事業計画書を作りたいのですが、加盟店数と売上目標を書くだけでよいのでしょうか?



「来年は五店舗に増やす」と決めても、その前に誰が研修を行い、支援費用をいつ払うかが決まっていなければ計画は動きません。
フランチャイズ本部の事業計画書は、店舗数の目標と、それを支える仕事・人・お金を一つにつなぐ資料です。
最初に決めたいのは売上の大きさより「次の一店舗を支えられる条件」です。
私は本部の計画でも、加盟店が事業を続けられるかを判断の出発点に置きます。
この記事では小規模な本部に向けて、計画書の項目、実績と予測の分け方、月次の資金繰り、計画がずれたときの直し方を記入例で説明します。
手元の帳簿と予定表を使い、次の打ち合わせで確認すべきことまで書き出してみてください。
まず「誰の計画書か」を決める
同じフランチャイズの事業計画書でも、本部の展開計画と加盟店一店舗の開業計画では、売上も費用も異なります。
本稿の対象は、自分の事業をFC化して加盟店を支える本部です。
| 計画の単位 | 主に整理すること |
|---|---|
| 加盟店一店舗 | お客様への売上、店舗運営費、本部への支払い、開業資金 |
| FC本部 | 加盟店からの収入、開発と支援の費用、人員、入出金の時期 |
| 会社全体 | 直営事業とFC事業の収支、共通費、会社全体の資金残高 |
加盟店の売上をそのまま本部の売上欄へ入れてはいけません。
本部が受け取るロイヤリティやサービスの対価と、加盟店がお客様から受け取る代金を区別します。
直営店も持つ会社なら、FC事業だけの計画と会社全体の計画をつなげます。
直営店の人が研修を担当する時間を無料と扱うと、本部の計画だけが軽く見えてしまいます。
計画を読む相手と決めたいことを書く
社内で次の加盟店を受け入れる判断に使うのか、金融機関へ資金使途を説明するのかで、必要な資料の詳しさは変わります。
最初のページに対象事業、対象期間、作成日、担当者、今回決めたいことを書きます。
たとえば「来期の一般募集を始める前に、研修担当者の確保と準備費用の支出時期を決める」とすれば、会議で何を確定するかが明確になります。
文章を立派にする前に、計画書を読んだ人が決めることを一文にしてください。
全体の準備順がまだ曖昧な場合は、FC本部の作り方で工程を確認してから計画へ落とし込みます。
本部の事業計画書に入れる七つの項目
本部の計画には「増やしたい理由」だけでなく「増やせる根拠」を残します。
最初から厚い冊子を作る必要はありません。
次の七項目を見出しにして、確認できていることから記入してください。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 事業の目的 | 誰へどの価値を届け、なぜFCで広げるか |
| 現状と検証結果 | 直営店の実績、人が替わっても再現できた業務、残る課題 |
| 提供する仕組み | 商品、手順書、研修、開業支援、継続支援の範囲 |
| 加盟店の計画 | 候補の条件、受入時期、開業予定、確認する担当者 |
| 本部の体制 | 担当業務、使える時間、外注する仕事、増員を考える条件 |
| 収支と資金 | 本部の収入と費用、初期支出、入金日、月末資金残高 |
| 実行と見直し | やること、担当、期限、確認資料、計画変更の条件 |
七つは別々の作文ではありません。
たとえば「開業支援を行う」と書いたら、体制欄に担当者、収支欄に費用、実行欄に準備期限が必要です。


強みは加盟店へ渡せる形で書く
「社長の接客が評判」という説明だけでは、別の店が何を再現すればよいか分かりません。
お客様の希望を確認する質問、提供するサービスの範囲、品質を確かめる手順など、渡すものへ言い換えます。
そのうえで「手順書は完成」「別の担当者による実演は未確認」のように現状を書き分けてください。
提供予定と提供できる状態が混ざらなくなります。
手順書そのものの作り方は、フランチャイズのマニュアル作成で一業務の記入例を紹介しています。
加盟店の計画と本部の準備を同じ予定表へ置く
募集開始日だけを決めると、問い合わせが来てから説明資料や研修教材を作ることになります。
加盟候補との面談、条件の確認、研修、開業支援を並べ、その前に本部が終えておく仕事を逆算します。
| 加盟店側の予定 | 先に整える本部の仕事 |
|---|---|
| 事業内容を検討する | 説明資料と実績の根拠を揃える |
| 契約条件を確認する | 提供範囲と費用の説明を整える |
| 研修を受ける | 教材、担当者、実演の確認方法を用意する |
| 開業する | 連絡窓口と初期対応の担当を決める |
候補者の希望日を、そのまま本部が対応可能な日付にしないことが大切です。
実績と予測を分けて数字の根拠を残す
計画書に必要なのは数字の細かさより、どの資料から計算したかをたどれることです。
実績、見積り、予測を同じ色の数字で並べると、まだ確かめていない条件まで確定したように見えます。
各数字に区分と確認資料を添えます。
| 区分 | 計画書での扱い |
|---|---|
| 実績 | 対象店舗、期間、集計方法と元資料を残す |
| 見積り | 依頼先、対象範囲、見積日、有効期限を残す |
| 予測 | 計算式と前提、前提を確かめる方法を書く |
| 未確認 | 空欄を推測で埋めず、確認担当と期限を書く |
本部収入は契約数と稼働月数を分けて計算する
「年末に五店舗あるから、五店舗分のロイヤリティが一年間入る」という計算は、途中開業の店があると合いません。
店舗ごとに開業予定月、請求開始月、入金予定月を置いてから合算します。
売上に連動する料金なら、加盟店の売上前提と算定対象も確認します。
料率だけを掛ける前に、何を対象とする料金なのかを揃える必要があります。
本部が何で収入を得るか、支援費用とどう釣り合わせるかは、フランチャイズ本部の収益モデルで整理しています。
計画書にはそこで決めた条件を、月ごとの数字として移します。
加盟候補を一括で「見込み店舗数」にしない
資料請求があった人、面談した人、契約した人、開業準備中の人を一つに数えると、予定が楽観的になりやすくなります。
候補ごとに今の段階と残る条件を記録します。
- 何を確認すれば次の段階へ進めるか
- その確認を誰がいつ行うか
- 開業予定が遅れた場合に動く費用は何か
未契約の候補を売上確定として扱わず、開業しない場合の資金繰りも別に見ます。
開業予定が変わるたびに、研修日程や支援担当者の予定も更新してください。
小規模本部の計画書を一枚にまとめる記入例
ここでは、予約制の店舗サービスを営む会社が、最初の加盟店を受け入れるための社内計画を作る例で整理します。
下の内容は記入例です。
実際に使うときは自社の確認資料と担当者へ置き換えてください。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 今回決めること | 最初の加盟店を受け入れる準備へ進むか |
| 対象期間 | 準備開始から六か月間。資金繰りはその先も月次で確認 |
| 提供する価値 | 予約受付からサービス提供までの手順と品質確認の方法 |
| 先に試すこと | 社長以外の担当者が手順書で受付と変更対応を終えられるか |
| 本部の担当 | 運営責任者が教材を整備し、経理担当が入出金を確認 |
| 受入条件 | 手順書、研修の実演確認、開業後の連絡窓口が揃うこと |
| 今回の準備支出 | 教材整備と外部確認の見積りを取り、支払月を記録 |
| 見直す条件 | 実演で未対応の業務が残る、担当時間が足りない、資金が不足する |
六か月は準備と検証を区切る期間です。
開業予定は、受入条件が揃う時期と加盟店側の準備を照合して決めます。
一枚の計画と根拠資料をつなぐ
一枚へ全部の数字を押し込むと、読みやすさも確認のしやすさも失われます。
概要は一枚にまとめ、収支表、資金繰り表、担当業務表、確認資料を添付します。
本文の「教材整備費」から見積書へ、「研修担当時間」から日程表へ戻れるようにしてください。
帳簿、売上記録、業務一覧、支援の記録を集め、実績の対象期間を揃えます。
費用、対応時間、加盟店側の準備など、数字を置く前に確かめる項目を分けます。
誰が何を確認するかを決め、確認結果が計画へ戻る日を置きます。
実行する仕事の月に費用を置き、契約と入金の条件に沿って収入を置きます。
資料を作る仕事と事業を検証する仕事を混同しないことも重要です。
計画書の空欄が埋まっても、現場でまだ試していないことは未確認のまま残します。
資金繰りは「利益」ではなく入出金の月で作る
収支表が黒字でも、入金より先に支払いが来れば手元のお金は減ります。
資金繰り表では期首の資金に実際の入金を足し、実際の支払いを引いて、月末にいくら残るかを確認します。
日本政策金融公庫は各種書式ダウンロードで資金繰り表を公開しています。
提出先がある場合は指定様式を確認し、社内用の表でも支払日と入金日をたどれる形にします。
本部準備の三か月を比べる計算例
次は入金時期の違いを見るための計算例です。
単位は万円、開始時点の資金は300万円とし、表に示した入出金だけを使います。
「その他の支払い」には、この例で発生する税金や借入返済などの支払総額を置いています。
| 入出金の項目 | 一か月目 | 二か月目 | 三か月目 |
|---|---|---|---|
| 月初の資金 | 300 | 190 | 120 |
| 加盟金などの入金 | 0 | 0 | 100 |
| 継続料金の入金 | 0 | 0 | 10 |
| 教材などの準備支払い | 60 | 20 | 0 |
| 人件費などの運営支払い | 40 | 40 | 40 |
| その他の支払い | 10 | 10 | 10 |
| 月末の資金 | 190 | 120 | 180 |
一か月目は300-60-40-10で190万円、二か月目は190-20-40-10で120万円です。
三か月目は120+100+10-40-10で180万円になります。
この表は利益の計算ではありません。
加盟金の入金をどの時点の売上にするか、設備支出をどう費用に配分するかなど、会計処理とは分けて確認します。
開業が遅れた場合を一つ作る
三か月目の加盟金100万円と継続料金10万円が、どちらも翌月へずれるとします。
三か月目の支払い50万円が変わらなければ、月末資金は120-50で70万円です。
当初の180万円から110万円減ります。


契約条件によっては加盟金の入金日と開業日は連動しません。
自社ではどの入金が何を条件に発生するかを確認し、その条件がずれる場合だけを動かしてください。
計画が遅れたときに残る資金と、先に支払う仕事を並べると、今決めるべきことが見えます。
税金、社会保険料、借入元本の返済、設備購入などを実際の表へ反映し、必要に応じて税理士や金融機関と支払予定を照合します。
直営事業の資金を使うなら会社全体でも確認する
FC事業へ回す資金が社内の口座間移動であれば、会社全体として新しくお金が増えるわけではありません。
直営店の給与、仕入れ、納税に必要な資金を確かめ、会社全体で残る金額を見ます。
「直営店があるから大丈夫」で済ませず、どの支払いまで賄えるかを予定表に残してください。
本部が支えられる仕事量から受入時期を決める
店舗数の目標があっても、研修と開業支援が重なる月に担当者が足りなければ、その計画は調整が必要です。
人数だけでなく、各担当者がその月に使える時間を確認します。
社長の兼任を見えない余力にしない
社長が募集、契約前の説明、研修、問い合わせをすべて受け持つなら、それぞれに時間がかかります。
直営店の運営や既存のお客様への仕事を先に予定へ置き、FC業務に使える時間を見積もってください。
| 業務 | 計画書へ残すこと |
|---|---|
| 候補との面談 | 準備、移動、面談、記録に使う時間 |
| 研修 | 教材準備、実技、確認、補習の時間 |
| 開業支援 | 現地対応、移動、連絡窓口の担当 |
| 継続支援 | 定期確認と突発対応に確保する時間 |
初めての仕事は時間が読みにくいため、最初の実施後に実績へ置き換えます。
「一人で何店舗まで」と固定するより、業務の中身と重なりを見て判断する方が計画を直しやすくなります。
募集を増やす前に解消する課題を書く
候補が集まることと、加盟店を受け入れられることは別です。
研修担当が決まらない、問い合わせが滞る、教材の修正が終わらない場合は、次の受入時期を見直します。
本部の仕事を減らすためだけに支援を省くのではなく、提供する約束と実際にできることを揃えてください。
最初の候補との検証は、0次募集の進め方とつなげると整理しやすくなります。
加盟希望者へ見せる数字は社内目標と分ける
社内で掲げた高い目標を、そのまま加盟希望者の予想売上として見せないでください。
社内の挑戦目標と、相手が投資判断に使う見通しでは数字の役割が異なります。
公正取引委員会のフランチャイズに関する考え方では、予想売上や予想収益を示す際、根拠となる事実と合理的な算定方法を備え、その根拠や方法を加盟希望者へ示す必要があるとしています。
既存店の平均などから作ったモデル収益も、出店予定店の予測と誤解されない説明が必要です。
根拠と条件の違いを一緒に渡す
好調な店舗だけを選び、その売上を標準として見せると、相手が条件の違いを判断できません。
対象店舗と期間、立地や営業時間などの条件、費用に含めた項目を数字と一緒に整理します。
- 実績の集計対象と期間が分かるか
- 予定地と既存店の条件差を確認したか
- 予測の計算式と費用の範囲を説明できるか
- 本部が提供する支援と加盟店が行う仕事を区別したか
日本フランチャイズチェーン協会も、事業計画書と資金計画の確認で、予想数値の合理性や投資・経費・返済との関係を挙げています。
本部側も相手がその点を確認できる資料に整え、契約前の説明と計画の数字が食い違わないようにします。
計画と実績の差は次の行動まで記録する
月が終わったら、計画値を実績で上書きして消すのではなく、両方を残して比較します。
差が出た理由と次に変えることまで一組にすると、翌月の判断に使えます。


「売上未達」で原因をまとめない
入金が少なかった理由は、契約が進まなかった、開業日がずれた、請求や入金確認が遅れたなど、同じではありません。
原因が違えば担当者も対応も変わります。
| 起きたこと | 次に確かめること | 計画へ戻すこと |
|---|---|---|
| 面談から先へ進まない | 説明で残った疑問と候補の条件 | 資料の修正と次回確認日 |
| 開業が予定より遅れた | 物件、採用、研修の進み具合 | 入金月と支援日程 |
| 支援時間が増えた | 繰り返し来る質問と対応記録 | 教材の修正と担当時間 |
| 資金残高が少ない | 入金遅れと予定外の支払い | 支払予定と資金確保の時期 |
一時的なずれか、計画の前提そのものが違っていたのかも分けます。
前提が変わったなら、翌月だけでなくその先の収支と受入予定まで更新します。
更新日と判断した人を残す
最新版が分からなくなると、募集担当は古い開業予定、経理担当は新しい入金予定を見ることになります。
計画書に版と更新日を付け、変更した前提、判断した人、関係者へ共有した日を記録してください。
更新前の計画も残せば、後から「何を見込んで決めたか」を振り返れます。
FC本部の事業計画書でよくある疑問
- まだ加盟店がなくても計画書は作れますか?
-
作れます。直営店の実績と本部の準備費用を出発点にし、加盟店の収入は開業時期や契約条件を前提として記入します。
未検証の条件は確認担当と期限を残してください。
- 何年分の計画を作ればよいですか?
-
使い道と提出先に合わせます。
社内では直近の入出金と担当業務を月次で確認し、その先の展開方針とつなげます。
融資などの提出用は求められる期間と様式を先に確認します。
- 加盟金が入る月だけ黒字なら問題ありませんか?
-
その月だけでは判断できません。入金前の支払いと、開業後に続く支援費用を確認します。
新規加盟が遅れた場合も資金と支援体制を維持できるかを計画へ入れます。
- 日本政策金融公庫の創業計画書をそのまま使えますか?
-
項目整理の参考にできます。
既存企業がFC事業を追加する場合を含め、提出書類は申込内容で異なるため窓口へ確認してください。
本部の支援体制や月次資金繰りは必要に応じて別紙にします。
- 事業計画書の作成を外注してもよいですか?
-
資料の整理や計算の点検を依頼できます。ただし前提を決める責任と実行する担当者は本部に残します。
納品時には数字の元資料、計算式、更新できる原本を受け取ってください。
次の一店舗を迎える前に三つの空欄を埋める
まず計画書の最初のページへ「誰が支えるか」「いつ支払うか」「何が揃えば進むか」を書いてみてください。
答えられない項目があれば、そこが次に確認する仕事です。
店舗数を増やす目標を立てた後は、実際に支える人とお金が同じ予定表に入っているかを確かめます。
本部の計画は、加盟店を増やした後も約束した支援を続けられる形にして初めて使えます。
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