フランチャイズ展開前に商標登録は必須か?1号店出店までに済ませるべき登録区分を元KFC役員が解説

フランチャイズ展開を考え始めた本部から、私が必ず最初に確認することがあります。それは商標登録を済ませているかです。

結論から申し上げます。法律上、商標登録はFC展開の義務ではありません。それでも私は、未登録のままのFC展開は致命傷になると断言しています。

理由はシンプルです。日本の商標は先に出願した者が勝つからです。あなたが何年使ってきた屋号でも、他人に先に登録されれば、あなたが使えなくなります。

そしてもう一つ。守るべきは事業名だけではありません。業態名・サービス名・ロゴまでまとめて区分指定して登録するのが、本部を守る正しい順番です。

読者

商標登録って、ある程度店舗が増えてからでも間に合いますよね?

坂本 和彦

そこが一番危ない誤解です。加盟店を1店でも増やした後に屋号を他社に取られたら、加盟店ごと巻き込んだトラブルになります。1号店を出すまでに済ませるのが鉄則です。

私は日本KFCに35年在籍し、840店舗のFC展開に携わってきました。ブランドを守ることが本部の信用を守ることだと、現場で骨身に沁みています。

この記事では、FC本部が1号店出店までに済ませるべき商標登録の中身を、区分の選び方・タイミング・費用まで具体的に解説します。

目次

フランチャイズ展開前に商標登録は必須か

法律上は任意、しかしFC展開では実質「必須」

商標登録をしなくても、店舗を出すことはできます。FC展開も、形のうえでは可能です。ですから法律上の義務ではないというのは事実です。

しかしFCというのは、同じ看板を全国に広げていくビジネスです。その看板を法的に独占できていないということは、土台のない家を増築していくのと同じです。

加盟店は、あなたの屋号とロゴに加盟金を払います。その屋号が他人のものになった瞬間、加盟店は看板を下ろすことになります。本部の信用は一夜で崩れます。

FCの全体像をこれから固める段階の方は、FC本部の作り方の全体像とあわせて読むと、商標登録が本部構築のどの工程に入るのかが一本の線で見えてきます。

つまり、商標登録は法律上は任意でも、FC本部にとっては事業の前提条件です。

致命傷になる理由は「先願主義」にある

日本の商標制度は先願主義を取っています。先に使っていた者ではなく、先に特許庁へ出願した者が権利を得る仕組みです。

これは厳しい現実を生みます。あなたが3年かけて育てた屋号でも、第三者が先に同じ名前を出願して登録すれば、その人が商標権者になります。

結果として、あなたが自分の屋号を使うと商標権の侵害になりかねません。看板の付け替え、メニューの刷り直し、加盟店への説明と補償が一斉に発生します。

飲食FCは特に狙われやすい世界です。繁盛している看板は誰の目にも分かりやすく、儲かる屋号ほど横取りの標的になるからです。目立つことと無防備であることは両立しません。

先願主義のこわさ
  • 長く使っていても、登録していなければ権利は守られない
  • 他人に先に登録されると、自分の屋号が使えなくなる
  • FCは看板を全国に広げるため被害が加盟店全体に及ぶ

商標登録で得られる2つの権利

商標を登録すると、本部は大きく2つの権利を手にします。これを理解すると、なぜFC本部に必須なのかがはっきりします。

一つは専用権です。指定した商品やサービスの範囲で、その名前を独占的に使える権利です。加盟店だけが堂々と看板を掲げられる状態を作れます。

もう一つは禁止権です。他人が同じ名前や紛らわしい名前を使うことを止められる権利です。模倣店に「やめてください」と言える法的な裏付けになります。

この2つがあって初めて、本部は加盟店に「あなたの看板は守られている」と約束できます。未登録のままでは、その約束を口先だけで語ることになります。

屋号を退職者に先取りされたミニFC本部

私が相談を受けたあるミニFC本部の話です。繁盛していた飲食業態をFC化しようとした矢先、屋号が既に他人に出願されていたのです。

出願していたのは、独立した元従業員でした。本部が商標を取っていないことを知っていて、先に押さえたのです。悪意があれば、それが通ってしまう世界です。

その本部はFC展開を半年止め、屋号を変えるか交渉するかの選択を迫られました。5万円弱で済んだはずの登録を怠ったツケが、何百万円もの損失になりました。

読者

従業員が屋号を取ってしまうなんて、そんなことが本当に起きるんですか。

坂本 和彦

起きます。むしろFC化の話が社内に漏れた時が一番危ない。儲かる看板だと分かっているから狙われるのです。商標は、味方より先に動くものだと考えてください。

ロゴだけ登録して屋号が無防備だった例

もう一つ、惜しいケースがありました。ロゴマークは登録していたのに、文字としての屋号を登録していなかった本部です。

近隣に、同じ屋号を少し崩したデザインで使う店が現れました。ロゴは違うので、ロゴの権利では止められません。文字商標を取っていれば防げた話です。

KFCで学んだのは、ブランドは名前とマークの両輪で守るということです。片方だけでは、もう片方の隙間から必ず崩されます。

登録すべきは「4つ」事業名・業態名・サービス名・ロゴ

本部が押さえるべき4つの商標

商標登録というと屋号だけを思い浮かべがちですが、それでは穴が残ります。FC本部が守るべきは、次の4つの要素です。

守る対象具体例登録の狙い
事業名(社名)運営会社の名称会社全体の信用を守る
業態名(屋号)店舗の看板名加盟店が掲げる看板そのものを守る
サービス名看板メニュー・独自サービスの呼称模倣されやすい売りの部分を守る
ロゴマーク・シンボル視覚的なブランドイメージを守る

このうち最優先は業態名(屋号)の文字商標です。加盟店が看板に掲げ、お客様が口にするのは、結局この名前だからです。

看板メニューの名前も侮れません。「あの店の◯◯」と呼ばれる独自商品名は、模倣店が真っ先に狙う部分です。売りになっている呼称こそ守ってください。

事業名も忘れがちな要素です。屋号と運営会社名が違う場合、会社名を放置していると、取引や採用の場面で信用を傷つけられる隙を残します。

文字商標とロゴ商標は分けて出すのが基本

屋号とロゴを一体のデザインで1件だけ登録する方法もあります。ただ私は、文字商標とロゴ商標を分けて出すことをおすすめしています。

一体で登録すると、デザインを変えたときに守りが弱くなります。文字を独立して押さえておけば、ロゴを刷新しても名前の権利は揺らぎません。

FCは長く続くほどロゴを時代に合わせて更新します。その時に名前の権利が独立していれば、ブランドの連続性を保ったまま見た目だけを変えられます。

要するに、屋号の文字とロゴは別々に登録して、二重に守るのが本部の基本姿勢です。

どの区分で登録するか

区分とは何か

商標は、ただ名前を登録するのではありません。その名前を「どの商品・サービスで使うか」を区分で指定して登録します。

区分は全部で45区分あります。第1類から第34類までが商品、第35類から第45類までがサービス(役務)です。費用も区分の数に応じて増えます。

ここが落とし穴です。飲食店の屋号を「飲食の提供」の区分だけで取っても、同じ名前のレトルト商品やECは守れないことがあります。展開を見据えた区分選びが要ります。

逆に、サービス業や物販系のFCなら、店舗営業の区分よりも商品や小売の区分が中心になります。業態によって守るべき区分は変わるのが原則です。

FC本部が押さえておきたい主要区分

業種によって区分は変わりますが、飲食系FC本部であれば、よく使われるのは次の区分です。あくまで代表例として整理します。

区分主な対象FC本部での使いどころ
第43類飲食物の提供レストラン・カフェなどの店舗営業の核
第35類広告・経営助言・小売・FC事業の運営支援加盟店募集や本部の事業運営に関わる部分
第30類コーヒー・パン・菓子・調味料など物販・PB商品・テイクアウト商品
第41類教育・研修加盟店向けの研修プログラム名

飲食FC本部の場合、第43類は最低限として、物販を見込むなら第30類、加盟店募集を本格化するなら第35類を加える形が現実的です。

飲食以外も同じ考え方です。学習塾なら教育の第41類、整体やリラクゼーションなら第44類が中心になります。自社の役務がどの区分に当たるかを起点に選びます。

多くの業態で、本部の事業運営に関わる第35類は検討候補になります。加盟店募集や経営指導そのものを守りたい本部にとって、押さえておく価値のある区分です。

読者

区分が多いほど安心なら、最初から全部取っておけばいいのでは?

坂本 和彦

気持ちは分かりますが、それは無駄打ちになります。実際に使う予定のない区分は登録できても維持費がかさむだけ。3年以内に本当に使う区分に絞るのが賢いやり方です。

出願前の先行商標調査を忘れない

区分を決めたら、すぐ出願ではありません。先に同じor似た商標が既に登録されていないかを調べる先行調査が要ります。

特許庁の検索サービスで誰でも確認できます。ここで類似が見つかれば、屋号を決め直す判断を出店前にできます。看板を作った後では取り返しがつきません。

どの区分が自社に必要かは、業態と展開計画によって変わります。区分と調査の最終判断は、フランチャイズ契約書の作り方を固める前に、弁理士へ相談することをおすすめします。

いつ登録し、いくらかかるのか

1号店出店までに済ませるのが原則

登録のタイミングは早ければ早いほど良い、というのが私の考えです。理由は、出願から登録まで通常6か月から10か月かかるからです。

思い立ってから権利が固まるまでに、半年以上の空白が生まれます。その空白の間に他人に先を越されれば、先願主義のもとでは取り返せません。

だからこそ、屋号と業態が固まった瞬間に出願へ動くのが正解です。店舗のオープンや加盟店募集を待つ必要は、まったくありません。

STEP
業態を決めた直後に出願

屋号と業態が固まったら、1号店の準備と並行して出願に動きます。店舗オープンを待つ必要はありません。

STEP
1号店の運営で再現性を確認

出願して審査を待つ間に、1号店でオペレーションの再現性を磨きます。権利化と仕組みづくりは同時に進められます。

STEP
登録完了後に加盟店募集を解禁

商標が登録され、看板を法的に独占できた段階で、安心して加盟店募集に踏み出します。これが本部を守る順番です。

加盟店の集め方そのものを設計したい方は、0次募集の進め方も合わせて確認しておくと、商標と募集のタイミングが噛み合います。

費用の目安

特許庁に支払う費用は、出願料登録料の2段階です。どちらも区分の数で変わります。代表的な金額を整理します。

項目1区分2区分備考
出願料12,000円20,600円3,400円+8,600円×区分数
登録料(10年)32,900円65,800円5年分納なら半額ずつ
特許庁費用 合計44,900円86,400円10年一括の場合

1区分を10年で登録するなら、特許庁費用は合計44,900円です。5年分納にすれば、最初の負担は1区分で29,200円まで下げられます。

弁理士に依頼する場合は、これに代理人費用が加わります。自分で出願すれば数万円、弁理士に任せれば1件あたり十数万円が目安と考えてください。

商標権は10年で切れますが、更新すれば延長できます。更新にも費用はかかりますが、看板を使い続ける限り払う価値のある維持コストです。

FC本部にとって、この金額は保険料です。屋号を1つ守る数万円を惜しんで、後で数百万円を失う本部を、私は何度も見てきました。

商標登録より先に考えるべきこと

ここまで商標登録の重要性を語ってきましたが、正直に申し上げたいことがあります。商標だけ取れば本部が成功するわけではないということです。

商標は、守る価値のある看板があって初めて意味を持ちます。守る中身が弱ければ、立派な商標も空っぽの権利になります。

商標を急ぐ前に確認したいこと
  • 1号店のオペレーションに再現性があるか
  • 2号店でも同じ品質を出せる仕組みがあるか
  • 加盟店が利益を出せる収益構造になっているか

この3つが固まっていない段階で、45区分すべてを取るような過剰投資は本末転倒です。守る中身を先に作るのが順番です。

とはいえ、屋号と業態だけは早く決まります。中身づくりと並行して、屋号の文字商標だけでも先に出願しておくと、横取りのリスクを最小化できます。

本部の規模をどう設計するかで迷っている方は、小規模フランチャイズの始め方もあわせて読むと、商標を取るべき範囲の見当がつきます。

商標を軽視した本部がどう崩れるかは、FC本部が崩壊する原因でも触れています。ブランドの守りの甘さは、崩壊の入り口になります。

読者

結局のところ、本部にとって商標登録は何のために取るものなんでしょうか。

坂本 和彦

加盟店の成功なくして本部の成功なし。これが私の信念です。商標は、その成功を加盟店と一緒に守るための、最初の約束だと考えています。

よくある質問

商標登録は自分でもできますか

自分で出願することは可能です。特許庁の電子出願を使えば、代理人費用はかかりません。ただし区分の選定や類似商標の調査で判断を誤りやすいのが難点です。

FC本部のように加盟店を巻き込む立場では、私は弁理士への依頼をおすすめします。数万円の節約より、確実に権利を固める方が本部を守ります。

すでに何年も使っている屋号でも登録は必要ですか

必要です。先願主義のもとでは、長く使っていた実績そのものは権利になりません。使用歴があっても、未登録なら他人に先取りされるのが日本の制度です。

登録までどのくらい時間がかかりますか

出願から登録まで、通常は6か月から10か月です。早期審査の制度を使えば、要件を満たす場合に審査期間を短縮できることもあります。

商標権は一度取れば永久に有効ですか

商標権の存続期間は登録から10年です。ただし更新の手続きをすれば、何度でも延長できます。実質的には、使い続ける限り守り続けられます。

区分はいくつ取っておけば安心ですか

安心を理由に数を増やす必要はありません。3年以内に実際に使う予定のある区分に絞るのが基本です。展開が広がった段階で追加出願すれば十分間に合います。

ロゴを途中で変えたら商標は取り直しですか

ロゴ商標は、大きく変えれば改めて出願が必要になります。だからこそ変わりにくい屋号の文字商標を別に押さえておく意味があるのです。

海外でもFC展開する場合、日本の商標で足りますか

足りません。商標権は国ごとに取得するのが原則です。日本で登録しても、その効力は日本国内にとどまります。

将来の海外展開を本気で考えるなら、進出予定の国でも出願が要ります。まずは国内をしっかり固め、海外は計画が具体化した段階で弁理士と相談してください。

まとめ

フランチャイズ展開前の商標登録について、要点を振り返ります。法律上は任意でも、FC本部にとっては実質的に必須です。

守るべきは事業名・業態名・サービス名・ロゴの4つ。先願主義のもとでは、1号店出店までに出願を済ませるのが本部を守る順番です。

費用は1区分10年で44,900円ほど。屋号を守るこの保険料を惜しめば、後で何百万円もの代償を払うことになります。

結論として、商標登録は加盟店との約束を守るための最初の一手であり、本部構築の土台です。

ミニフランチャイズの全体像から学び直したい方は、ミニフランチャイズとは何かから読み進めてください。本部づくりの順番が一本の線でつながります。

本部構築の進め方を体系的に学びたい方は、私が主宰するミニフランチャイズ本部構築プログラムの無料セミナーで、商標を含めた本部設計の順番をお話ししています。

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この記事を書いた人

坂本 和彦のアバター 坂本 和彦 合同会社フードビジネス多店舗展開研究所 代表 / 元日本KFC役員

日本KFC元役員。35年在籍・840店舗以上を統括したフランチャイズのプロ。退任後、合同会社フードビジネス多店舗展開研究所を設立。コンサルティング件数20社以上、業種20近く。商工会議所・大企業へのセミナー登壇、著書・メディア出演多数。中小規模事業者のFC化を支援する「ミニフランチャイズ本部構築プログラム」を主宰。

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